(特集)大学と高校の連携
大学と高校の連携。誕生の目的と背景
はじめに~学ぶ意欲の低下~
2016年4月の高校進学率は、98.7%(通信制を除く)となりました(文部科学省「平成28年度学校基本調査」より)。これは、子どもたちにとって、もはや高校は義務教育と変わらず「高校で勉強をしたい」というモチベーションのない子どもたちも高校へ進学することを意味します。
大学も同様で、何かを学びたいから大学へ行くのではなく、大学へ行くことを決めてから何を学びたいのかを考える高校生が多くなりました。
また、学ぶ目的が明確でないままの学習は、「何の役に立つのかわからない」と感じる高校生を増やすことにつながり、高校では学習と大学・社会とのつながりを生徒に伝える必要が生じました。
さらに、最近、大学では「名称を見ただけでは何を学ぶのかわからない」学部学科が増えたことも加わって、高校生が大学や学部学科を選ぶためのガイダンスは必須のものとなりました。
一方、大学にとっても、18歳人口の減少から「学生獲得」が深刻な問題となって、高校に対する広報活動が重要な課題となりました
増加する高大連携の取り組み
こうした社会状況を背景に、「大学の学習内容を理解することで、進路選択に役立てる」「大学での学問の面白さにふれることで、学習意欲の向上につなげる」といった目的から高大連携がスタートしました。
高大連携は1998年前後からはじまり、2001年ごろから導入校は増加し」を策定しています。ひとくちに「高大連携」といっても、その連携の仕方はさまざまです。その代表的なものに、出前授業や出張講義があります。
なお、文部科学省は高大接続改革を着実に実行する観点から今後取り組むべき重点施策とスケジュールを明示し、体系的かつ集中的な施策展開を図ることを目的として、高大接続改革実行プランを策定しました(リンクは外開き/文部科学省のサイトへ)
出前授業・出張講義~大学の学問を知る入口~
最も一般的なのは、「出前授業」「出張講義」で、大学教員を高校に招いて大学の模擬講義をしてもらうものです。講義の内容について知識を深めるというより、どの学問に興味があるかを高校生が考えるために、ロングホームルーム、土曜日、総合的な学習の時間等利用して、進路指導の一環として行われることが多いようです。高大連携の事例としては最もポピュラーなものといえましょう。
実施にあたっては、近隣の大学に大学教員の派遣を依頼する、進路実績の多い大学に依頼する、出前授業のコーディネートを行う業者に依頼するといった方法がとられています。
最近は大学側も「出前授業」「出張講義」の窓口を設けたり、講義内容の一覧をホームページに掲載するところが増えています。
事例として宇都宮大学の出前授業案内ホームページをリンクします(外開き)
生徒が興味に応じ受講するのが一般的
一般的には、人文・社会・自然系などの学部学科から数名ずつの教員を招き、生徒はその中から興味のある講義を選択して聴講します。
「出前授業」「出張講義」の利点としては、高校の行事として取り入れやすく、自校で行うため移動手段等の手配が不要である点です。
マイナス点としては、講義時間が短いため、さわりしか内容にふれられないこと、大学のもつ雰囲気が伝わらないことがあります。
高校側の意識が大切
「出前授業」「出張講義」は、生徒の大学進学の意欲を高めるのに非常に効果的である一方で、つまらないと感じれば生徒が大学自体への興味を失ってしまうことになりかねません。講師の選定や講義内容については、大学や講師、コーディネート業者に一任するのではなく、自校で検討した上、大学側とよく相談することが大切です。
大学が高校に出向くものとしては、大学の入試課職員や入試担当の教員などによる、大学の学部・学科ガイダンスがあります。
具体的事例の一つとして「全国高等学校進路指導協議会」のホームページをリンクします(外開き)。
公開講座と開放講座
公開講座・開放講座等~知的刺激を受け向学心をアップ~
高校生が大学レベルの講義を聴くことにより、大学で専門的な事柄を 学ぶ楽しさを知ってもらうことが主な目的です。主なスタイルとしては、以下のようなものがあります。
1. 大学の通常の授業のうち、高校生が通える夕方や土曜日などの時間帯に高校生が受講しやすい内容の講義を配し、大学生と一緒に受講するもの
2. 高校生が通える時間帯や夏休み中の集中講義など、大学の講義を高校生向けにアレンジして高校生のみで受講するもの
3. 大学の教員が高校に出向き、連続した講義を行うもの
これらのスタイルは、ガイダンス的な「出前授業」「出張講義」に比べ、連続してまとまった講義を受けられ、内容を深く学ぶことができるのが特長です。
単位については、形式的な「受講修了証」を授与するケース、受講した大学に入学した場合に大学の単位として認定したり、高校の単位として認定するものなどがあります。
時間の調整が課題
問題としては、上記1.2.の場合は高校の授業時間や部活との兼ね合い、高校から大学への移動時間。
1.は、大学の通常の授業に数名ずつしか受け入れられないことが挙げられます。
3.は、どのような授業を行うか、自校の生徒の学力等にあわせた、綿密な打ち合わせをする必要があります。大学の教員の時間のやりくりや、経費の負担をどうするかも問題です。
その他の講座受講法
その他の大学の授業を受講するケースとしては、大学が衛星放送やケーブルテレビ、インターネットなどを利用して高校生にも理解できる大学の通常の授業を配信し、高校生が自校で授業を受けるものがあります。
「公開講座」「開放講座」等による高大連携は、大学と高校の間で協定を結び実施されることがほとんどですが、高校生が個人で受講を申し込むことができる講座や一般向けの公開講座の中に高校生も受講可能な講座を設けている大学もあります。
日本の大学の関連情報(主な大学生涯学習公開講座のご案内)
・国立大学の場合
・公立大学の場合
・私立大学の場合
オープンキャンパス
オープンキャンパス~大学の雰囲気を体感~
「オープンキャンパス」とは、高校生や受験生を対象に大学を開放し、学部学科の紹介や模擬授業、施設見学、相談会などを通して、大学を理解してもらうためのプログラムです。高校単位だけでなく個人でも参加することができます。
オープンキャンパスのスタイルとしては、以下のようなものがあります。
1. 生徒に志望校や近隣大学のオープンキャンパスに参加することを奨励する
2. 高校で生徒を志望学部別等いくつかのグループに分け、団体で参加する
3. 大学に事前に依頼し、大学が定めたオープンキャンパス日、あるいはその高校のために設けた日に、その高校向けのオープンキャンパスプログラムを組んでもらう
実際に大学を訪れることで、高校生は大学での学習内容だけでなく、キャンパスの雰囲気や大学生の様子を知ることができます。
参加する時期に応じた目的意識を
オープンキャンパスは、ただ参加するだけでなく、目的を明確にすることが大切です。「まずは大学の雰囲気を味わう」「オープンキャンパスを通して学部・学科選択を考える」「受験勉強のモチベーションを高める」などが考えられますが、学年に応じた目的意識を持って参加しましょう。
「高校生のための大学進学ガイド」の「オープンキャンパスに参加しよう」もご覧ください。
大学と高校の連携事例(ナレッジステーション調査)
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